ネタバレのみで構成されている隠しページです。
・攻略ルート解説
・登場キャラ表情差分一覧
ボボボーボ・ボーボボ
首領パッチ
ビュティ
ヘッポコ丸
ところ天の助
ソフトン
ポコミ
田楽マン
ガ王
魚雷ガール
隠しキャラ1
隠しキャラ2
・ED4小説【治った後で・後】
ED1:『ハッピーバースデー』
ビュティルートED。
ビュティを選択肢で選ぶとこのEDへ。
ED2:『みんなでカラオケ』
ポコミルート通常ED。
ポコミを選択肢で選び、隠しルートを発生させていないとこのEDへ。
ED3:『愛と権力』
ポコミルート特殊ED。
ポコミを選択肢で選び、隠しルートを発生させている場合。
※隠しルートの条件。
魚雷ガールの買い物にて、彼が好きそうなものを選択。
→上手な人の斬り方 最期の一押し編
→売れ残りのスポーツ新聞
→骨付きカルビ
→ザクロティー
以上、4ポイントを獲得した後【誰かを探す】で発生。
ED4:『治った後で』
強制終了ED。
【自分で考える】選択時に発生。
ED5:『トッカエヒッカエ』
強制終了ED。
【今日は諦める】、時間切れ、
または魚雷ガールの買い物失敗で発生。
あれから数日がたった。
漆黒の空に浮かぶのは月。遠く響くのは鐘の音。
街頭テレビのスクリーンが表示を変えた。どっと歓声が沸きあがる。
秒刻みの精巧な時計。観衆は寒空の下、笑みを浮かべて食い入るように見つめていた。
数分後に来る新たな年のために。
「毎日このお祭り騒ぎなら面白ぇのになぁ…」
年越しそばならぬ、年越し菓子をほおばるのは首領パッチだ。
飲み散らかし、食べ散らかしたホテルの一室は、とても厳かな新年を迎えるつもりはなさそうだ。
二度、ドアをノックする音が鳴る。
「首領パッチ君、まだ起きてる?」
顔を出したのはビュティだ。
すると首領パッチは一瞬、顔を向き合ったくせに、寝た。
「ぐぉー、ぐぉー…」
「今まで起きてたでしょ!って、この部屋何!?」
「ぐーすかぴー、ぐーすか…ぐぇ!痛ぇ!」
「寝たふりすんな!」
バシリと尻を叩かれて首領パッチは絶叫を上げた。
修羅の顔をしたビュティが何度も頬を打つ。今年最後のツッコミがコレだろうか。
年を越す前に死んでしまいそうだったので、大人しく平謝りをした。
平静を取り戻したビュティは大きく肩でため息をつく。
「もう…私が片付けなきゃいけないんだからね」
「………へぇへぇ」
無言で腕を少し振り上げる。
首領パッチは可愛い顔をしてちらりと舌を出した。
「こんなことしてる場合じゃないんだってば」
「あぁ?」
「破天荒さんが呼んでるよ、行ってあげて」
さぁさぁ、とせかすように背中を押される。廊下まで連れられて首領パッチはビュティの顔を見上げた。
「何で?あいつ寝てんじゃねーのか」
「この騒ぎようじゃ、寝付けないんじゃないのかな」
廊下の突き当たりの窓を覗き込む。列を成して騒いでいる大勢の姿が見えた。
ホテルが街中にあるという理由もあってか、どこもかしこもうるさいぐらいに騒がしい。
首領パッチは少し口を尖らせた。
数日前、破天荒は風邪で倒れた。相当重症だったらしく数日たっても一向に回復しない。
皆は病院に行くことを薦めたが、人込みが嫌だと破天荒は突っぱねた。ただでさえ、正月が近いということで病院のほうも慌しい。
…というのは建て前で、医者より首領パッチの傍にいれば治ると信じているから、なのだが。
「一緒にいてあげて」
「………仕方ねーな…。まぁ、ただ寝てるだけっつーのも、つまんねぇだろうしな」
首領パッチは不憫な子分を思い、破天荒の元へ向かった。
ドアをノックすると、少ししゃがれた声が返ってきた。
ゆっくり扉を開いて奥へ進む。上体を起こした破天荒が笑っていた。
首領パッチはひょいとベッドによじ登って真向かいに座る。それをニコニコと表情を崩したまま破天荒は見つめていた。
「お前、大丈夫なのか?」
「えぇ、だいぶ」
「本当かぁ〜?何だ、まだ熱っぽいじゃねぇか、寝ろ寝ろ」
ぐいぐいと胸を押して倒そうとすると、熱を帯びた腕が首領パッチにまきついた。
見上げると破天荒が嬉しそうに目を細めている。
「もうすぐ年明けですね」
「お?おぅ」
「あの………今年最後のお願い、聞いてくれますか」
「おぅ」
破天荒は少しだけ腕の力を緩めた。
「抱きしめてもいいですか」
「もうしてんじゃん」
「ハハ…そうでした。でも、改めて…」
分かった、と首領パッチは自ら腕を伸ばした。首にまきつくように小さな手を天へ向ける。
破天荒はほっとしたように身を縮めた。
少しひんやりした首領パッチの額に、自分の額をつけてくすぐったそうに笑う。
その表情につられたのか、首領パッチも笑った。
『3・2・1…あけましておめでとうございまーす!』
割れんばかりの歓声と、はしゃぐ姿が街頭テレビに映った。
粉雪に交じって色とりどりの鮮やかな紙吹雪が舞う。白い息が弾んだ。
勿論、部屋の二人には聞こえなかった。
わずかに遅れて花火が鳴り響き、ホテルのガラスを揺らす。そこで年が明けたことに気づいた。
「あ、明けちゃいましたね…」
破天荒が顔を上げる。
首領パッチは視線が戻ると腕を右手を高く上げた。
「あけおめー、破天荒!」
「はい。お誕生日おめでとうございます」
大きな手がかぶさる。
面食らったように目を丸くして、首領パッチは首をかしげた。
すると破天荒は照れくさそうに笑って、握り締めた手をまた優しく包む。
もう片方の手で破天荒はテレビの電源を入れた。
大歓声の中抱き合う人々が映る。おめでとう、おめでとう、何度も繰り返す。
「世界中の人間が、一番最後に惜しむ日、そして一番初めに喜びを分かつ日…両方の境目。その一瞬がおやびんの誕生日に相応しいと思いました」
「………」
「これが、オレの考えたおやびんの誕生日、です」
実は誕生日なんてないんだけどな。
首領パッチは心の奥ではなく、手前、喉元辺りで思った。口に出しそうになった。
だが、目の前のあまりにも嬉しそうで幸せそうな顔を見ていると、それもいいと思った。
自分に相応しいと言うのなら、喜んで。
「じゃあ、そうする」
「おやびん…」
「これからも、そうする」
「へい」
傍らで激しく声を上げているアナウンサーがいた。
ずらりと並んだ観客にマイクを向け、何事かを聞いてまわっているようだ。
首領パッチがそちらを向くと、破天荒も同じように向いた。先に視線を戻した首領パッチは目の前の横顔をじっと見て、口を開く。
「お前、今年の抱負とか、お願い事は?決めたのか?」
「そうですね…。もう、願い事は叶っちゃったので…」
「???」
「おやびんの傍にいられれば、オレは他に何にもいらないんです。なので、他に望むことはありません」
一瞬呆然とした首領パッチだったが、よくよく言葉を反芻してケラケラと高い声を上げる。
破天荒は静かに笑い返した。
「欲のない奴だなぁー」
「いいえ?これでも結構…欲張りなんですよ」
「え…?ちょ、破天荒…ま、待て…お前何しようとし…」
いつの間にか身じろぎすら出来ないほど抱きしめた腕が、ずいと体を前に運ぶ。
微動にもせず見つめる目に心臓が破裂するほど驚いていた。
視線を落とそうとしても、破天荒がぎゅうと締め付けるせいで顔が上がる。
「………ね?おやびん」
破天荒が笑うと、僅かに空気が揺れる。
距離が近づくのに比例して、まぶたが落ちていく。
画面越しの声が遠のく。
花火の音が数回聞こえた気がした。
今年も来年もその先も、ずっとずっと、幸せな年を。
ハッピーハッピーバーズデー。