二次創作レポート
- 【読書の時間】
- 早朝、アジトの廊下を歩いていると、藤堂が段ボールを抱えて歩いてきた。
「おう、紫。おはようさん」
「おはよう、この時間に藤堂さんが起きてるなんて珍しいな」
「われも随分早いのぉ、なんじゃ眠れんかったんか?」
「いや、早く寝すぎて起きた」
「ははは、健康的じゃのぉ」
両腕に抱えられた段ボールに目を向けると、かわいらしいキャラクターと一緒に印刷所の名前が書かれてる。
「それ、どうしたんだ」
「舎弟がでかいシノギがあるとかでの、事務所の住所が使えん言うとったからここに届けるようにしたんじゃ」
そういうところが本当に優しい。だが藤堂は少し渋い顔をして段ボールに視線を落とす。
「いらん世話だったかもしれんがのぉ。様子がおかしゅうてな……絶対に開けんでくれ言うちょった、言われんでもそんなことはせんがな」
「ちょっと見てもいいか」
貼り付け票にはアジトの住所、西園寺烈宛てになっている。たしかに藤堂の名前も使えない。ご依頼主は印刷所の名前だろう。
「…………」
「どうした?」
「いや……。多分、これは、チラシかなにかじゃないか? 勧誘……とかの」
小さくではあるが。品名が書かれている。
なんとなくそんな気はしていた紫はあったが、その品名とでかいシノギというのがなんであるか完全に理解してしまった。
「今時、チラシなんぞ刷って配る言うのもなぁ……」
「形になっていたほうが読む人もいるからな。オレも紙に書かれたのを見るのは好きだ」
「なるほど、紫は本好きじゃからのぉ。わしは全然じゃ」
ははは、といつもより声を小さめにして笑う藤堂の顔をじっと見て、紫も笑みを返した。
(……気づいてないなら、このまま黙っておこう)
きっと義理堅い男だから勝手に中身を確認するまではいかないだろう。伝票の題名に書かれている、自分を題材にしたであろう本が入っていると気づかなければ。
紫は舎弟の身を案じるのと同時に、後でこっそり読ませてもらおうと思ったのだった。
END